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  老樹名木詳細
 
元小峰の菩提樹(もとおみねのぼだいじゅ)


■山里に馴染み、県内各地のボダイジュのふるさとに
 ボダイジュは寺院などに植栽されている中国原産のシナノキ科の落葉高木で、もともと日本に自生している植物ではありません。ところが、この山深い小峯(おみね)の里にとけ込んで、しっかりと倉岡家の墓守をしています。天明年間(1781~1788)に、この地の庄屋だった倉岡庄三郎(くらおかしょうざぶろう)が伊勢神宮に参拝したとき、京都から持ち帰って先祖の供養に倉岡家の墓地に植えたと伝えられています。
 3本あった樹のうち、昭和6年(1931)の台風で1本が倒れましたが、残った2本は樹勢盛んで、よく繁った葉が墓地全体を覆って菩提樹の森をつくりあげています。かわいいハート形の葉がそよ風に揺れ、苔むした墓石に木漏れ日が射し込む穏やかな光景は、山里の風情をいっそう深みのあるものにしています。6月に葉のつけ根に小さい葉のような包葉(ほうよう)を出し、その中から花柄(かへい)を伸ばして先端に芳香のある花を咲かせ、球形の実がなります。
 この樹は県内最大のボダイジュで、県内の寺院にあるボダイジュはすべて、この樹から苗を取って植えたものといわれています。
 本当の菩提樹、つまりお釈迦様が悟りを開いた場所の神聖な樹として、インドやミャンマーで仏教徒から崇められているのは、全く別のインドボダイジュです。これはクワ科の常緑高木で、イチジクや天草などの海岸で見られるアコウや観葉植物のインドゴムノキの仲間です。中国には全く産しない樹なので、中国に仏教が渡来した後で似た感じのする中国に産するボダイジュに入れ替わったのでしょう。
 また、シューベルトの歌曲などで有名な菩提樹(リンデンバウム)は、ヨーロッパに産するシナノキ科の落葉高木セイヨウシナノキで、ヨーロッパでは普通に植栽され、街路樹などにも好んで用いられる樹です。


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