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  老樹名木詳細
 
椿の黐(つばきのもちのき)


■椿地区の目印にもなるような、大きなクロガネモチ
 「ツバキのモチノキ」というと、木の名前が二つ並んだ奇異な名称になりますが、正確にいうと今回のタイトルは「椿という集落にあるクロガネモチの大木」の意味です。県内にはモチノキ属の樹木が12種自生していますが、その中でクロガネモチは赤い実をたくさんつけて美しく、樹形も自然に整って手間がかからないので、庭園などに普通に植えられる常緑広葉樹です。そのためモチノキ属の代表扱いをされ、県内で「もちのき」または「もち」といえば、クロガネモチであるのが普通です。県内には本当のモチノキもあるのですが、これは実の付き方がまだらで見栄えしないので、庭園樹などには使うことはありません。
 椿の集落に入って真っ先に目立つ、道沿いに高く聳えている樹が「椿の黐」です。クロガネモチは庭園や公園に、また街路樹としても使われて普通に見かける木です。しかし、こんなにスマートに高くそびえているクロガネモチの大木は滅多に見られません。遠くから見ても高い樹だと思いますが、根元まで近づいて太い幹のごつごつした樹肌にふれると、数百年も生きてきたたくましさと、やさしい樹の温もりを感じます。
 この樹のすぐ横に石の祠(ほこら)と広場があります。祠には男女二体の歳の神が祀られ、享保4年(1719)に造られ明治24年(1891)に再建されたと刻まれています。歳の神は正月に歳を一ついただく神様で、周辺は今もきちんと清掃されています。歳の神には、行く年の無事を感謝し、来る年の無病息災を祈ります。
 近くには美里町指定の天然記念物が多く、「吉見神社の銀杏」「佐俣(さまた)阿蘇神社の石櫧(いちいがし)」「白石野の石櫧」「西山の躑躅(つつじ)」などがありますが、「岩野観音の櫟(くぬぎ)」は昨年の台風13号で倒伏して失われたのが残念です。また、「胞衣川(いやがわ)のカワベニマダラ」は極めて特異な淡水産赤藻類です。
 また、美里町は江戸時代後期から昭和初期にかけて石橋が多く作られた地域です。県内でもとくに石橋が多い地域として知られ、国指定重要文化財の霊台橋や県指定重要文化財の雄亀滝橋(おけだけばし)をはじめ40基の眼鏡橋が残されています。町指定は7橋ありますが、佐俣にある二俣橋は緑川支流の釈迦院川と津留川の合流点に架かる二つの橋で、合流点にあるため二つが繋がっているように見え、まとめて二俣橋と呼ばれています。二俣橋から見上げると国道218号に近代工法で作られた年祢橋(としねばし)があり、新旧工法の違いが歴然として興味深い眺めです。
 椿の集落の近くに「椿の鍾乳洞」があり、古くから修験僧が修行を行う神聖な場所とされ、洞内に不動尊が祀られています。また、車で10分ほどの距離にある坂本の集落から釈迦院に標高差700メートルを登る「3333段の石段」は、参詣道として世界のあちこちから集めたり寄贈されたりした石材を積み上げて、昭和63年(1988)に完成した日本一の石段です。釈迦院は、金海山釈迦院大恩教寺という天台宗の寺で、延歴18年(799)の開基と伝えられ、中世には49坊を持つ霊場として栄えたところです。標高950メートルほどの尾根から、不知火海や天草の島々と豊かな稔りをもたらす八代平野を見下ろす眺望は素晴らしく、金海山という寺号は夕陽に映える不知火海に由来するのかと思うほどです。


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