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  老樹名木詳細
 
長生の石櫧(ながばえのいちいがし)


■「長生」の集落を見守り続けてきたイチイガシ
 車がやっと離合できるくらいの山道を、豊かに茂る木立に囲まれて登ること15分、森の右前方に突然大きなイチイガシが現れます。案内の地図や案内板の指示に従い道を確かめながら来たのに、どこかで間違ったのではないか、まだか?まだか?の連続で期待よりも不安が大きくなる長い道のりを経て、やっと出会えたという感動がこみ上げてきます。豊かな森の中で、周囲を多くの木々に囲まれてひときわ大きくそびえ、悠々と構えているイチイガシの姿には、苦労したが会えてよかったと思わせる風格があります。
 乗ってきた車は樹の近くに寄せず、少し離れた場所に駐車してください。樹の根は、幹や枝葉が茂っている範囲以上の地下に広がっています。そうでなければ、大きな幹や枝を支えることも、全体を養う水や養分を吸収することもできません。特に、この樹は自然の森に戻った場所で、根元を重い車で踏まれることなく生育していますから、訪問する人が全員しっかり心に留めてほしいことです。
 周囲を見回してみると、樹が立っている小高い場所の周囲は、人の手でならされて平坦になった地形ですから、ここに集落があったことがわかります。しかし、その地面の上に現在は落ち葉が厚くふわふわに積もり、落ち葉を踏んで歩き回る自分の足音だけが響きます。このイチイガシの巨樹は、自然に帰った森の中で誰にも邪魔されずに、自由に素直に枝を伸ばし今日も成長を続けているのです。
 集落があった時代にも、この樹は集落の守り神として大切にされていました。そのような記録はありませんが、樹の幹などに傷がなく、自然のままの姿を保ちながら育ってきたことが、何百年も大切にされてきた証拠です。その大切にする気持ちが現在に続いていることを示すように、幹には注連縄が巻かれています。
 樹の姿がよく見える場所に、または、樹の下に座って、林床に木漏れ日が斑紋となって踊るのをぼんやり眺めていると、自然の懐に抱かれているのを感じます。しばらく休んだら、樹の根元に近づいて大きい幹に触れ、ゆっくりと周囲を巡って上を見上げ、枝の張り具合を確かめてください。このような巨樹は、見つめれば見つめるほど大きく見えてくるのが不思議です。
 この樹の横に「大山祇(おおやまづみ)神社」の鳥居と小さな祠(ほこら)があります。祠と樹の関係は分かりませんが、両者あわせて周辺が神聖な場所として大切にされ続けていることが分かります。
 近くに、日本を代表する恐竜の化石の産出地として町指定天然記念物の御船層群上部層化石包蔵地があり、このイチイガシの下にも多くの化石が眠っています。また、地元の小学生によって日本で最初に発見された肉食恐竜の化石は、いわゆる御船龍の愛称で知られています。
 樹から遠くないところにある駄野(だの)神社は牛馬を守る神様です。近くに馬頭観音もあり、今も春と秋に大祭が行われ、ここ田代地区が阿蘇の外輪山に繋がる場所で、阿蘇と同じように牛馬との関係が深い生活が営まれていたことがうかがえます。


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