鳥栖(とす)家の庭先の木斛(もっこく)
モッコクは樹形が美しくて気品があり、自然に姿形が整う木なので「庭木の王」といわれます。加えて性質強健で寿命が長く、肥沃土を好むが土質は選ばない、成長が遅いので樹形が変わりにくいなど、庭木として大切な性質も兼ね備えています。江戸時代からアカマツ・イトヒバ・カヤ・イヌマキとともに「江戸五木」と呼ばれ、重用されてきた造園木です。その成長の遅い木が、この鳥栖家の樹のような大きさに育つには300年以上の歳月が必要で、第一代藩主・細川忠利公が鳥栖家を訪問されたときには、ここに存在していたことが伝えられています。町指定天然記念物です。
モッコクはツバキ科の常緑広葉樹で、日本列島から東南アジアの暖地に分布し、県内でも沿海地の低山丘陵に普通に自生が見られます。葉はしゃもじ形で厚く、表面は深緑色で光沢があり、裏面は淡緑色で日当たりの良い場所では葉柄(ようへい:葉と茎をつなぐ部分)が赤みを帯びています。小さい白い花が6月に葉の付け根にぶら下がるように咲きます。その花の中を覗いて見ると、花の中心に雄しべがヤブツバキのように束になって付いていて、その形からツバキ科だと納得します。庭木として広く植栽されていますから、花の時期にちょっと注意して、できれば虫眼鏡を使って観察すると、自然がうんと近づいてきて楽しいものです。
もっと観察をするなら、その花の蕾は真冬に形成されますから、6月の開花まで半年間はいつでも見つけることができます。そして小さな果実が10月から11月になると赤く熟し、12月になると破れて中から赤い種子が軸にぶら下がった状態で顔を出します。果実も種子も赤いということは、小鳥に見つけてもらい、食べてもらって、遠くに行って糞と一緒に撒き散らしてもらうのに好都合な形質です。
【場所】
国道57号を東へ。原水駅方面へ左折。JRを越えて直線約800メートル。県道311号左折、入り口が分かりにくければ県道30号を左折。1本目の農道を左折すると1本目の角地内。
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