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  老樹名木詳細
 
拝高さんの椋(はいたかさんのむくのき)


■兄弟のように育ったムクノキとエノキ
 遠目には一本の樹のように見えますが、実はムクノキとエノキが寄り添って立っています。まるで兄弟のように一緒に大きく育ち、地元の人々に大切にされています。
 ムクノキとエノキは同じニレ科の落葉高木で、よく似ています。「榎の実(えのみ)ならばなれ、木は椋の木」(エノキの実がなっても木は間違いなくムクノキだ)「椋はなっても木は榎」(ムクノキの実がなっても木は間違いなくエノキだ)といった諺があって、何が何でも自分の主張を譲らない強情さを例えるときに使われます。それほどムクノキとエノキは、実では区別できても、幹や枝葉では区別しにくいと定説のようになっています。
 しかし、下の図のように葉を一枚ずつ取って比較してみると、思ったよりも簡単に区別できます。観察のポイントは葉脈(ようみゃく)で、真ん中に主脈が真っ直ぐに通っているのは同じですが、ムクノキ(右)の側脈は数が多く、ほぼ平行に葉の縁まで達しています。それに対してエノキ(左)の側脈は数が少なく、その先端は葉の縁に近づくと縁から逃げるように伸びています。また、ムクノキの一番下の側脈にはおまけの側脈が下向きにほぼ平行についていますから、葉脈の様子に着目すれば間違うことはありません。また、ムクノキの葉は細工物の研磨に使われるほど表面がざらざらしていますが、エノキの葉はそんなにざらざらしていません。さらに、ムクノキはムクエノキともいいますが、これは大木になると樹皮が厚くはげ落ちるので皮が剥けるエノキの意味で、この樹皮の様子でも区別することができます。
 エノキの実は紅褐色に熟し、子どもたちが「榎の実鉄砲」の弾丸にして遊びました。また、ムクノキの実は黒く熟して甘いので昔の子どもたちは木に登ってちぎり「おやつ」にしていました。それで葉よりも実で区別できる人が多く、そこから先に挙げた諺のような言い方ができたのでしょう。
 拝高さんと呼ばれる拝高神社は分田(ぶんだ)八幡宮の分社で、境内には分田八幡宮の宮司で国学者・本居宣長の門人であった杉谷参河(すぎたにみかわ)(宝暦13~天保10年:西暦1763~1839)と、その子文明(ぶんめい)の墓があります。杉谷一族は日本古来の神道の伸張に貢献していると「鹿本町史」に記録されています。しかし、境内には社殿などの跡はみあたりません。
 このムクノキとエノキには注連縄が巻かれ、周囲には玉垣が作られていて、ご神木として古くから地域の崇敬を集めてきたことがわかります。また、周辺もきれいに掃き清められていますが、玉垣を作ったときに根元を傷つけた痕があるのが残念です。拝高という名称の由来は、ご神木としてこの樹を高く拝んでいたからとか、四国にいくつもある「ハイタカ神社」(漢字は不明)との関係などがいわれますが、よくわかっていません。
 この樹に隣接して下分田農業公園があります。近辺の農村環境の基盤整備と同時にみんなが自然を楽しめる空間の創造を目的に作られたものです。公園は広場や遊具、駐車場やトイレが整備されていますから、「拝高さんの椋」を高く拝み、公園で自然を満喫してはいかがでしょうか。
 すぐ近くの菊池川に架かる分田橋の下流は、国指定天然記念物「菊池川のチスジノリ発生地」です。チスジノリは南方系の特殊な淡水産紅藻の一種で、暗赤紫色(赤みを帯びたチョコレート色)の細長い糸状で、それが何回も枝分かれした様子が血の筋のように見えることからついた名です。夏は見ることができませんが、冬には10センチメートルくらいから数十センチメートル、長いものでは1メートルほどにも伸びたチスジノリが、流れの中になびいているのが観察できます。


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