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  老樹名木詳細
 
野の川の黐(ののかわのもちのき)


■庭木として美しいクロガネモチ
 クロガネモチはモチノキ科の常緑広葉樹で、本州南部・四国・九州の暖地から沖縄・台湾やインドシナ半島にまで分布します。赤い実が美しい庭木として知られ、世間でふつう「もちのき」と呼んでいるのはクロガネモチで、植物学的にいえば別種のモチノキではありません。このことを知っている人の中には、モチノキを「ほんもち」と呼んでクロガネモチと区別する人もいます。ただし、本当のモチノキはクロガネモチに較べて赤い実の着き方がまばらなので、庭木として利用することはありません。
 雌雄異種なので、雄株を植えたら実がなりません。しかし、庭に植えるときには植木屋さんが雌株を選んで苗を作り、植えてくれるので大丈夫です。こういうと、雌株だけを植えて実がなるかと心配する人がいますが、九州では近くの山に雄株がたくさん生えていますから、花粉は自然の中から自然に供給されて赤い実がなります。
 和名は、本当のモチノキに較べて若枝や葉柄が紫黒色になるので、黒金(くろがね)色を帯びたモチノキの意味です。初夏に淡い紫色の小さい花がたくさん咲き、秋から冬にかけて真っ赤な実がたわわに稔り、野鳥が集まってきてついばみます。実のついた枝は生花の材料にも使われ、また、材は加工しやすくて器具材や彫刻材に使われます。

■「とりもち」の原料になる木
 モチノキという名は、樹皮などに鳥糯(とりもち)物質を含む木の意味です。「とりもち」はゴム状の粘着性のある物質で、鳥や虫などを捕獲するのに用いられ、古くは紙に塗って蠅取り紙も作りました。春から夏に樹皮を剥いて水に漬けて腐らせ、秋になってから臼で搗(つ)き砕いて清水でよく洗い流すと、粘性のあるゴム状物質「本糯(ほんもち)」が残ります。もともとは灰白色ですが、空気にさらすと赤褐色になるので「赤もち」といい、ソーダで漂白すると「白もち」が得られます。
 鳥糯は、モチノキ、クロガネモチ以外にも、ナナミノキやイヌツゲなど多くのモチノキ属の樹木から採取できます。最も多量に鳥糯を含有しているのは本当のモチノキで、それに次ぐのがクロガネモチとタラヨウです。また、材は淡緑白色で堅く、緻密均質で狂いが少ないので小細工物に、とくにろくろ細工や櫛や印鑑の材料に適しています。

■老岳(おいだけ)神社と山頂から眺める天草の海と山
 中野の川から上野の川の集落を経て老岳(おいだけ:586メートル)に登る車道があります。老岳はなだらかなやさしい山容の山で、山頂までの距離は7キロメートルほどですから、海と山の景色を楽しみながら歩いて登っても2時間で到達します。車で上れば一息ですし、帰りは西の赤崎への車道を降れば有明海を見下ろす別の景色が楽しめます。この距離も約7キロメートルです。
 山頂の少し手前、野の川からの道と赤崎からの道が合流するあたりに老岳神社があります。社叢は見事なアカガシ林で、大きな常緑樹が茂った中に社殿が建っています。この神社のご神体は大きな岩で、海岸にあった大岩が神馬に乗って飛び移ったものと伝えられ、牡蠣殻(かきがら)が付着しているそうです。ここのアカガシ林は社叢だからこそ残された自然遺産で、県内では簡単に接することはできない種類の森林ですから、ゆっくりと自然の息吹に浸ってください。
 神社から歩いて5分ほどで山頂です。南には天草の最高峰・倉岳(682メートル)や龍ヶ岳、東には白岳・鋸岳の先に不知火を挟んで八代・芦北の山々が眺められ、北は天草松島から三角岳、その西に雲仙岳までの大きな眺望が楽しめます。
 このほか、立春には100万本の菜の花園の早咲きの菜の花が見事です。2月2日(土)には菜の花ウォーキングが行われ、高舞(たかぶと)山に登る5キロのコースと、九州百名山で有名な高さ397メートルの次郎丸岳に登る8キロのコースを歩きながら、一足早い春が楽しめます。


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