分厚い自然に囲まれ、今でも伝統を色濃く残す五家荘。深い山ひだが幾重にも重なり、細い道を縫うように進む。ようやく仁田尾の左座家が現れる。石垣の上の茅葺民家である。その風景は決して押し付けることなく、自然と謙虚に向き合いながら暮らしてきたことが伺える佇まいである。200年ほど前に建造された屋敷で、屋根、柱、梁の構造体や囲炉裏、カマドなどその遺構を復元し、保存することに力を注いでいる。茶会がひらかれることなども、建物が親しまれていることの証で評価できる。
平安時代、菅原道真の嫡男、菅宰相(左座太郎)がこの地に落ち延びたと伝えられているように、菅原家の梅の家紋が使われ、来客の身分に応じた玄関が三ヶ所あるなど、歴史的にも、景観的にも、地域の記憶を継承するものとして残しておく必要があるのではなかろうか。
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