佐敷城址とその足元に流れる佐敷川に沿って、かつて熊本県南部の交易の要衝として栄えた薩摩街道佐敷宿の町並みがある。修景された多くの町屋や商家、点在する寺社・祠、昭和初期であろう木造洋館造りなどの連なりが、往時からの時間の積み重ねを感じさせる。佐敷川にかかる相逢橋に立つと、この宿の広がりと要衝の地であることが見てとれる。街道を下ったところにある「旧枡屋」は、町並みに馴染みながら上質に復元され、佐敷宿の顔にふさわしい「芦北町薩摩街道佐敷宿交流館」となった。
この地区景観に魅力を与えているものに、街道に少し斜めに面してノコギリの刃のように並んだ町屋がつくる独特の空間がある。敵の侵入を待ち伏せし、身を隠すための所らしい。さらに街道を横切る路地が城と川とを結んで走り、この街に奥深さを与えている。
佐敷宿の特徴は400年余の歴史のみならず、多様な業種の商家・商店街の存在にあり、さらなる街の再生・成長の可能性を予感させる。住民によるまちづくりは、平成3年から「さしき町四地区商栄会」・「おどんが商隊」・「あいおい会」そして「佐敷地区町並保存会」と繋がり、交流館(旧枡屋)復元にいたった。その成果を評価したい。地元住民と薩摩街道を訪れる多くの人によって、佐敷宿が熟成することを期待する。
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