熊本市新町の街角に船場橋と対になった文林堂本店がある。日本の高度成長期より今日までに多くの歴史的建造物が我々のまちから姿を消していった。この建物は書画を愛する人々の拠点にとどまらず、まちの人々から親しまれた旧市街の風景であった。
新たに建て替えられたこの作品は活動を続けるまちにおける建築の保存や再生という課題に対して、現実的な手法を提示した。それはこの街角に立ったとき、人々の心の中によみがえる思い出やイメージの再生である。この作品をつくるにあたって建主と建築家は「記憶の継承」を目指し、現実的諸問題の中で実現させたことを評価したい。
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