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日光の集落は標高500m近い屋根端部に等高線に沿って高密度に営まれ、それ自体築造の絶妙さを遺憾なく示している。屋敷回りの微小緩傾斜地までを使い尽くす菜園の在り様は、古典的山村の自給型農業の面影を色濃く残している。その上方、石垣を幾重にも積み重ねた棚田は「笹を置いて隠れる」極小田を含むまさに見事な「千枚田」となっている。その石は米・雑穀で購われたという。縦横に畦・小道・水路・緩やかに築かれた往還は「人の背による運搬」を前提とするヒューマンスケールのものである。動き手の減少、高齢化による「荒れ」が目立ち始めてはいるが貴重な文化財的価値を持つ。なんとか後世に伝えたいかけがえのない景観である。 |