坂本善三生誕の地、小国町黒淵は山間の杉木立に囲まれた、ゆったりとした佇まいの集落である。そこに、この美術館はある。
小国町下城の民家を移築した本館と、この地方に数多く残る置き屋根の蔵を模した展示棟と収蔵棟。コの字に配置されたこの三棟は、絞り込まれた緩やかな勾配の前庭をつくり、芸術との出会いへの高揚の場となっている。
また、隣接する鉾納神社や背景の杉山などの周辺環境を巧みに採り入れ、永い間そこに建っていたかのように周囲に同化している。「風土に溶け込んだ美術館、・・・坂本善三美術は小国の生活の中にあるのが最も似合う」という建設に携わった人々のコンセプトが見事に具現化されている。
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