新しい場所に新たな考え・デザインのもとに創造されるのが、景観創出の一つの柱とすれば、その地域固有の風土、文化、伝統をふまえて作られるのが、景観創出のもう一つの柱と考えられる。
今回、人吉城跡の一部である多門櫓・角櫓・長塀は、三百数十米にわたって、残存する写真や発掘調査をもとに史実に沿って復元されており、そこで使われた建築材料、工法も旧来の方法によって行われている。もともと、人吉城跡は町のシンボル的存在ではあったが、今回の復元によって造られた、球磨川のほとりに白い帯を流したような長塀は、町づくりや景観の中心的位置をさらに確固たるものとし、地域の活性化に大きく奇与することが期待できる。また、表面だけを真似た偽物や安易なコピーが横行する現代にあって、徹底した本物指向は見る人に深い感銘を与える。
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