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  老樹名木詳細
 
市房神社参道の大杉(いちふさじんじゃさんどうのおおすぎ)


■霊験あらたかな山を守る兵士のような大杉並木
 熊本・宮崎両県にまたがる九州山地南部の主峰・市房山(いちふさやま:標高1722)は、昔から「お嶽(おたけ)さん」と呼ばれる球磨の霊峰で、山そのものがご神体として人々の崇敬を集めてきました。
 この市房山の四合目付近に「市房神社」が鎮座しています。祭神は霧島神宮と同じ彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)、天津彦火瓊々杵尊(あまつひこほのににぎのみこと)、吾田鹿蘆津媛命(あたかあしつひめのみこと)、豊玉媛命(とよたまひめのみこと)、火闌命(ほすせりのみこと)、火明命(ほあかりのみこと)の六座が祀られ、人吉市の青井神社(※)とともに相良家とその領民に崇敬されてきた神社です。
 その神社の一の鳥居にあたる祓川(はらいかわ)の登山口から神社まで約1キロメートルの参道に、樹齢千年はあろうかという老杉が立ち並んでいます。霊峰と崇められる山に登った人、あるいは市房神社に参詣した人たちが参道脇に植えたスギ苗が、千年もの時を経てこのような巨樹に育ったのです。
 スギは日本特産の常緑針葉樹で、幹が真っ直ぐ上に伸び、木目も真っ直ぐな木です。真っ直ぐな木という意味でスギの名があると言われていますが、長寿なので神社などにもよく植えられてきました。また、スギは鋸が無い時代から板にして使うことができたことで有名な木です。楔(くさび)を打ち込めば真っ直ぐに割れて板になり、そのような板が弥生時代の水田遺構にも使われています。建築材としても多く用いられ、日本建築は杉材を抜きにしては語れないほどです。昭和41年(1966)皇居の宮殿建築にあたっては、ここの樹齢500年を越す2本の巨木が、霧島、秋田、木曽、吉野の名杉とともに献上されました。その他にも酒樽や下駄や割り箸などまで、日本人の生活の中で広範囲に使われている用材です。
 市房山の杉並木を遠くから眺めると、カシなどの自然林の上にスギが頭を出して並んでいるのが見えます。自然林がスギの大きな幹の大部分を覆い守っているので、大きな台風の襲来で各地のスギの植林地が壊滅的ともいえる被害を受けたときにも、ここの杉並木はほとんど被害は受けずにいて、自然林の植物たちと助け合って生活している強さを実感させました。
 この並木の大杉は自然のままに育った大きな枝を何本も力強く広げて、それぞれが個性的な表情をしています。その一本一本を丹念に確かめながら、落ち葉が厚く積もった自然林の中をぬって進む参道を神社まで、小鳥のさえずりや林床の花を愛でながら一歩一歩踏みしめて歩いたらいかがでしょう。この森は国指定天然記念物の蝶「ゴイシツバメシジミ」の生息地でもあります。
 近くには水上村指定の天然記念物「猫寺の木犀」「千ヶ平八幡の椋」「一の宮神社の銀杏」や、ふるさと熊本の樹木に指定された「安牧神社の鹿子木」があります。とくに市房山の山頂近くに多い県指定天然記念物「ツクシアケボノツツジ」は、葉が開く前に枝先いっぱいに淡紅色の花を咲かせるので、5月中旬の開花期には山麓から山肌が花の色に染まって見えるほどです。また、「市房ダムの桜」はダム湖畔に植栽された約10000本のソメイヨシノなどが見事です(花期は3月下旬~4月上旬)。


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