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  老樹名木詳細
 
平川神社の杉(ひらかわじんじゃのすぎ)


■集落を見守る長老のようなスギの老樹
 平川の集落に入って車道をしばらく進むと、突然、スギの巨樹が見えてきます。神社の敷地が現在の道路より低いところにあるので、地上3メートルあたりから上の姿が見えるのですが、ひと目見てこの樹だと確信するほどの迫力があります。
 道路脇から歩道として整備された道を降りると、昭和41年(1966)に移転建立された鳥居があります。以前は社地が広く、参道の両側にスギの大木が林立していましたが、県道が境内を横切る形で新設されたので、社地が半減し、社殿を道路下に拝するようになりました。鳥居の左側の社地は残り、今では子どもたちのための遊具が置かれています。
 新たにコンクリートで整備された参道を進むと拝殿があり、その左脇に道路から見えたスギの巨樹が腰を据えています。しっかりと根を張り、樹肌は苔むして堂々とした老樹の風格を漂わせています。まっすぐ上に勢いよく伸びて、力強く枝を広げ、木の下に立つと心安らぐ感じがします。樹の根元にも、緑色のビロードの布を敷きつめたように苔が生えています。樹の裏側には大きなコブがあり、800年余の樹齢の重みを感じます。また、拝殿の裏に回るともう1本のスギの巨樹があり、拝殿前のものより大きいのに驚きます。このほかにも境内にはスギの大木が数本あります。
 平川阿蘇神社は、阿蘇神社の摂社ですが、勧請された時代ははっきり分かっていません。健磐竜命(たていわたつのみこと)と比咩神(ひめのかみ)が祀られ、由緒書には「阿蘇大神の御嫡孫が御降誕の際、産湯を沸せる平竃(ひらかまど)を祀り平竃明神と称え伝う」とあります。このため、当初は平竃神社または石神大明神と呼ばれていましたが、いつの間にか平竃がなまって平川になったといわれています。社殿は何度も改修されていますが、虫被害のためかろうじて原型をとどめる木製一刀彫の獅子像二体があり、由緒と社歴の古さを物語っています。
 平川阿蘇神社から車で7~8分のところに全国の名水百選に選ばれた池山(いけやま)水源があります。九重連山に降った雨が、阿蘇や久住の火山噴火物の未固結層に時間をかけてしみ込んだもので、透明度の非常に高い水が毎分約30トンも湧き出ており、水を求めて訪れる人が絶えない名水です。この地域の人たちは、この清らかで豊富な水を利用して田畑を作り、生活を支えてきました。そのため、この泉に感謝して水神様を祀り、毎年8月5日を祭日として、周辺をすみずみまで清める行事が受け継がれています。
 池山水源から山道を3.5キロメートルほど登ると、夏から秋にかけて紫色のヒゴタイの花で埋め尽くされる「ヒゴタイ公園」があります。ヒゴタイは阿蘇を代表する花の一つで、ぼんぼんのような丸い独特の面白い形をしています。外輪山上の広い草原と五岳を背景に咲いている姿は阿蘇の雄大さを感じさせる風景です。


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